第二十三話『フラグのような』

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 形南(あれな)と平尾のデートは終わりを迎えた。帰りは平尾に家の前まで送ってもらうのだと形南本人からレインが届き、嶺歌(れか)兜悟朗(とうごろう)の尾行もいよいよ終わりが近づく。  一日見ていた形南は本当に恋する一人の女の子であり、それを見れた事が嶺歌にとっても嬉しかった。  そして彼女が本当に平尾を好いている事も今回の件で再認識する事が出来ていた。 (平尾君はどうなんだろ)  彼の様子にも目を向けていたが、平尾の態度は恋なのかそうでないのかの判別がつきにくい。  というのも、彼は女の子に対する免疫自体が少ないのでどんな子といても同じような態度を取るのではないかと容易く想像出来るからだ。  その為、彼の気持ち次第でどのような状況なのかが大分変わってくる。  嶺歌は形南と楽しげに会話をしながら帰路に着く平尾を観察するが、やはり最後まで彼の真意は分からなかった。  この間の時のように彼が形南の金銭を狙っているという考えはもう今の嶺歌にはなかったが、平尾がどのような思いで形南に接しているのかは謎のままである。  結局平尾は形南を大きな豪邸である高円寺院(こうえんじのいん)家の目の前まで送るとそのまま彼女に手を振り、立ち去っていく。  形南が中へ入らないかと口にしていたものの「しゅ、宿題あるから……」と挙動不審になりながら断っていた。  形南も形南で無理強いはせず笑顔で平尾を見送った。  そんな様子を兜悟朗と二人で物陰から見ていた嶺歌は二人の雰囲気が前よりもいい感じになっているような、そんな気がして嬉しかった。  平尾の気持ちは分からなくとも形南は彼を一直線に慕うだけだ。それ以外に彼女は選択肢を選ばないだろう。  そう認識し、今日のデートが無事に終わった事に安堵していた。
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