28人が本棚に入れています
本棚に追加
/520ページ
「おねえちゃん、髪の毛やって〜!」
平日の朝が始まると嶺璃が部屋に入ってきて嶺歌の目の前にヘアゴムとリボンを見せてくる。
嶺歌はそんな妹の姿を見て小さく笑みを溢すと「ここ座んな」と口にしていつものように小さな頭の両サイドにツインテールを作り始める。
嬉しそうに髪の毛を預ける嶺璃は今日は遠足なのだと報告をしてきた。
「れかちゃんお土産何がいい? おそろにするんだ〜」
「お土産ねえ、嶺璃が可愛いいって思うもの買ってきてよ。二人で付けよう」
「うんっ! 分かった! 絶対付けようね!」
仕上げのリボンをサイドに施し、嶺璃の髪の毛を整え終えると嶺璃は嬉しそうに飛び上がりこちらを振り返った。
そんな妹に向けて嶺歌は再び笑みをこぼすと「勿論」と言葉を返して嶺璃の頭を撫でた。
髪の毛が崩れないように一度だけ撫でるとそのまま自身の支度の準備に取り掛かる。
「ねえれかちゃん〜」
「ん?」
嶺璃は部屋から出ていかず嶺歌の袖を掴んだ。甘えた声でこちらを見上げてくる。
「このブレスレット、れかちゃんの分はないの? おそろにならない?」
そう言って嶺璃が見せてきた物は以前形南の厚意で嶺璃にプレゼントしてもらったブレスレットだ。
可愛らしいデザインのそれは形南が用意してくれただけあって高級感がそれとなく滲み出ている。
嶺歌は嶺璃のその言葉に悩む事なく言葉を返した。
「ないよ。それたぶん一点ものだし。めちゃくちゃ高くて貴重な物だから大事にするんだよ?」
「そうなんだあ……うん、大事にする。れかちゃんの友達からのプレゼントだもん」
嶺璃は少し残念そうに眉根を下げていたが、素直に嶺歌の言葉に頷いてみせた。嶺璃は甘えん坊なところがあるが、きちんと嶺歌の言う事を聞く素直で良い妹だ。
嶺歌は反抗する事なく肯定した嶺璃に「うん、えらい」と笑顔を向けると嶺璃は途端に嬉しそうに抱きついてきた。
「れかちゃんだいすき!!!」
「はいはい、あたしもだいすきだよ。準備するから、そろそろ嶺璃もご飯食べに行きな」
嶺歌はぎゅうっと自身の体に巻きついてくる小さな妹を優しく離すとそのまま部屋の外へ誘導する。
嶺璃も駄々をこねる事はなく満足そうにリビングの方へ向かっていった。
最初のコメントを投稿しよう!