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「あのさ……和泉さん、にお願いがあって」
「お願い? 何?」
「そ、その…………」
言いにくそうに彼は俯き、そして顔を上げた。
何か一大決心をしたかのような平尾の表情は嶺歌にとって不思議でならなかったが、彼が言いたい事を言うまで口を挟むのは止める事にした。
すると平尾はようやく言いたかったであろう事柄を、その驚きの一言を口にした。
「あれちゃんと関わるの、やめてほしいんだ!!」
「は?」
思わず嶺歌は怪訝な顔をする。彼は一体何を言っているのだろう。第一形南との交流をこの男に指図される覚えはない。
平尾に対する気遣いはしていたつもりの嶺歌も流石に彼の意味不明な願いに頷く事は出来なかった。
「どういう事? ちゃんと説明してよ」
嶺歌は躊躇う事もせずはっきりと彼に問い掛ける。
理由もなしにこのような事を口にしたというのなら、申し訳ないが形南には見る目がなさすぎる。嶺歌は理不尽な人間が大嫌いだ。
だからこそ、平尾には理由を聞かねば気が済まない。
嶺歌は内心苛立つ自分がいる事を自覚し、それが多少表に出てしまっている事にも気が付いていた。
形南に申し訳ないと思いつつも自身のプライドが彼の発言を簡単には受け入れられないのだ。
そんな嶺歌の不穏な空気を感じ取っているであろう平尾は先程よりも逃げたさそうに表情を歪めながら、しかし逃げ出す事はせず再び口を開き始める。
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