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「でもさ」
互いに謝罪を終えると嶺歌は素朴な疑問を彼に投げ掛ける。
「平尾君もそういうのなかったの?」
そういうのとは言わずもがな形南からの高級なプレゼントやご馳走の類の事だ。
形南の愛する平尾であれば、彼女は嶺歌以上におもてなしをしているに違いない。
すると平尾は眉根を下げながら自身の頬を掻き始める。
「あ、あった……俺は肩身が狭くて何度も断ったらあれちゃんも引いてくれたんだ…この間のお出かけの時も断ったよ」
その言葉を聞いて嶺歌は目を見開き、思うがままに言葉を述べた。
「それはそれで尊敬するわ。中々断れる雰囲気じゃなかったしな……」
嶺歌は終始断り続けたという平尾に感心し、それと同時に平尾が形南の相手に相応しい男であるのだと、初めてそう感じる事が出来ていた。
「で、でも……それ聞いたら確かにって思ったよ。俺も、あれちゃんの押しの強さは知ってるから、和泉さんが断り切れなかったっていうのも……納得だよ」
平尾はそう言って小さく頭を掻いた。誤解は完全に解けていた。
嶺歌は互いの警戒心が一気に無くなるのを実感し、そのまま聞いてみたかった事を口にする。
「平尾君てあれなの事好きだよね?」
「えっええっ……!!?」
平尾は再び肩を跳ねらせると今度は真っ赤な顔をして身体をのけ反らせた。分かりやすい反応である。
「う、うん……」
しかし否定する事はなく彼は素直にそう頷く。
その光景を見て嶺歌は確信していた。平尾の形南に対する感情は本物であるのだと。
(両片思いってやつ……? やったねあれな)
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