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第三話『運命の』
「変な一日だったな……」
帰宅してからはいつもの様に風呂に入り夕食を済まし、明日までの宿題を終えてからベッドの上に寝転がっていた。
今日に限っては依頼を受ける事は止めていた。一度頭の整理をしたかったからである。
形南には帰宅後直ぐに連絡を送っていた。高円寺院家のお嬢様に一秒でも早く連絡を送らなければ失礼だと判断したからだ。
玄関先で靴を履いたままスマホと睨めっこする嶺歌を見つけた母は呆れていたが、自分にとっては重大な要件であった。
そして彼女に連絡を送ってから数分も経たない内に返信がきていた。そこで改めて短く挨拶を終えると彼女の方から明日早速お願いしたいのだと連絡が返ってくる。
躊躇う事もないため直ぐに問題がない事を伝えると『ではその日にまたご連絡差し上げますわね』と形南の方から連絡を切り上げてきた。そうして今に至る。
「何としてでも失礼のないようにしないと……」
形南は優しげな印象を抱くお嬢様であったが、まだ彼女の事を理解するにはあまりにも時間が足りていない。嶺歌は礼儀を欠かす事だけはしたくなかった。
それにしてもと嶺歌は考える。先程は動揺していたため疑問に思わなかった事だが、何故彼女は有能なあの執事を橋渡し役として選ばなかったのだろうか。
彼であれば何でも難なくこなしてしまいそうである。会って間もない嶺歌から見ても彼が有能だと分かるのだ。だと言うのに不思議な話であった。
「明日タイミングがあれば聞いてみようかな」
そんな事を一人呟きながら次第に眠気が襲ってくるのを認識する。そろそろ限界だ。
嶺歌は布団を掛け直し、電気をつけたまま重い瞼を閉じる。そしてそのまま深い眠りへとついていった。
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