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放課後になると本日の魔法少女活動は休みにして形南に電話をかけた。
夜に稽古が控えているという形南は夕方であれば電話ができるからと今朝方こちらに伝えてきていたのだ。
嶺歌は帰宅路を歩きながらスマホを耳に当てる。するとツーコールで形南が電話に出た。
『嶺歌、お疲れ様ですの。ダブルデート楽しみですわね!』
形南は開口一番嬉しそうに声を弾ませるとそのような言葉を口にする。
嶺歌はその彼女の言葉を聞いて嬉しい気持ちになった。
「そうだね、でも何であたしと兜悟朗さんも? また二人でデートすればいいじゃん」
嶺歌は率直な意見を言う。水族館に出かけた時のように、平尾とまた二人きりでデートする方が形南としても嬉しいのではないだろうか。
そんな思いからだったのだが、形南はふふふと笑みをこぼしながらこんな言葉を返してくる。
『勿論平尾様ともお出掛けはしたいですの。けれど嶺歌とも遊びに行きたいですし休日が限られている中思いついたのがダブルデートなのですの!』
「そっか、そう言ってくれてありがと。ちなみにどこに行くかはもう決まってるの?」
こちらとも仲を深めたいと思ってくれている形南の気持ちを嬉しく思いながら、嶺歌はもう一つ尋ねてみた。
ダブルデートは初めてだが、男女の四人で行くならレジャー施設がよくあるデートスポットだという情報は嶺歌も知っている。
すると形南は嬉しそうにワントーン声の調子を上げると勿体ぶらずに教えてくれた。
『遊園地ですの! やはり平尾様と絶叫マシーンでドキドキしたいですの!』
彼女は既に妄想を始めているようでキャ〜という声を電話越しに上げながら話してくる。
嶺歌はそんな彼女の相変わらずな様子に苦笑しながらも、しかし自分自身も楽しみになっていた。
(あれなと遊園地か)
ダブルデートではあるが、形南と一度は行ってみたいと思っていた。そんな事を考えながら興奮気味な形南と暫く会話をして通話を切る。
「さて……」
魔法少女活動は中止しようと思っていたが、何だかやる気が出てきた。やはり今日も一件くらいは受ける事にしよう。
そう思い至った嶺歌は自宅に帰ると早々に自室で魔法少女の姿へと変身し、いつものように慈善活動を行いに外に出るのであった。
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