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「勿論ですのっ! 攻めまくってなんぼですわ! 動かれてこそ、進展に繋がるのですのよっ!! それにお好きな相手に自分を知って頂きたいと思われる感情は当然の事ですのっ! それが恋ですの!」
形南は勢いよくそう力説した。
そんな彼女の興奮した様子に嶺歌は呆気に取られるが、しかし形南の真剣な表情を見てこの女の子に相談をして良かったと心から思えていた。
形南がなぜ平尾にああも熱を上げているのかも今ならよく分かる。
その人を好きになるともう、その相手の事ばかりを考えてしまうのだ。そしてそれが酷く楽しくて、飽きずに延々と考える事ができる。
それが恋なのだと、嶺歌はこの年になってようやく理解していた。
嶺歌は形南に握られた手をぎゅっと柔らかく握り返すと「ありがとあれな」と歯を見せて笑う。
形南もその表情を見て安心してくれたのかホッとした顔を見せるとゆっくりと座席へ腰をかけ直し、嬉しそうに微笑んだ。
「兜悟朗の事でお聞きしたい事がありましたらなんでも仰ってね。応援致しますの!」
「ありがとう。知りたいことはたくさんあるけど……」
嶺歌はそう思い、重大な事に気が付く。自分は兜悟朗を好きだと言っていながら、彼の苗字を知らない。
(うわ、知らなかったんだあたし)
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