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第二十八話『ドライブ』
「あ、あれちゃんの好きそうなものを教えてほしいんだけど……」
定期テストも近付いてきており、教室で友達と問題の出し合いをしながら昼休みを過ごしている時だった。
平尾が珍しくもこちらを呼び出し、廊下で話す事になったのだ。
「好きそうなもの? 何だろう」
嶺歌も彼の言葉に首を傾げる。そう言われると形南の好きなものがよく分からない。
可愛らしいものなら何でも喜んでくれそうではあるが、明確に形南の好きなものだと思えるものは嶺歌も知らなかった。
しかし嶺歌は最近形南に日頃の感謝として彼女にプレゼントをした物の存在をそこで思い出す。
「そういえばあたしもちょっと前に形南にプレゼント渡したよ」
以前から形南に何かを渡してお礼をしたいと思っていた嶺歌は雑貨屋さんで形南に似合いそうな可愛らしいマスコットを購入し、先日彼女にプレゼントしていた。
形南はそれを毎日のように鞄に身に付け通学してくれているようだ。
その事を平尾に話すと彼はそうなんだと考えを巡らせているのかぶつぶつ言いながら相槌を打つ。そうして彼は唐突にこのような事を口に出してきた。
「あ、あのさ今度一緒に買いに行くの手伝ってくれないかな? お、俺詳しくないから」
「ごめん無理。あたし男とは二人で出掛けない主義だから」
嶺歌が即答すると平尾は驚いたような表情を見せて次にこんなことを繰り出してくる。
「え、そうなの? でもと、兜悟朗さんと二人で出掛けることがあったってあれちゃんに聞いたけど……」
「え!?」
そこで嶺歌は初めて動揺の色を見せた。
確かに思い返せば兜悟朗と二人で何かした事がそれなりにある。私的な理由からではなくても、彼と二人で出掛けることに何も違和感を覚えてはいなかった。
嶺歌はそこでもう一度兜悟朗への感情を思い出し、学校であるにも関わらず赤面しそうになっていた。
「……ちょ、タンマ」
「え、ど、どうしたの? 何か顔赤くない?」
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