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平尾は嶺歌のいつもと異なる様子に驚いたのかあたふたしながら問い掛けてきた。
兜悟朗の事となると顔の熱が収まりそうにないと実感した嶺歌は平尾に何と説明しようか思考を巡らせる。
彼には兜悟朗への気持ちを話してみるのもありなのだろうか。そう思った時、嶺歌達に第三者の声が掛けられた。
「平尾〜うちの嶺歌をあんまり独り占めしないでよ」
「そろそろレカちゃん返せ〜!」
「れか! ここの範囲得意でしょ? 教えてほしくてさ〜」
友人達のその声で嶺歌は平静さを次第に取り戻し始める。
困っていた所で助け舟が出された事に感謝しながら、嶺歌は平尾に向き直り「あれなの好きなものは分からなくても、あんたが選んだものなら喜ぶはずだよ。だから自分で考えて買った方がおすすめ」と声を返した。
さりげなく先程の話題を逸らしたが、平尾は特にそれには気が付いていない様子でそっかと言葉を放つ。
「わ、わかった。じゃあ俺一人で考えてみる。あ、ありがと。じゃあ……」
「うん」
そう言って隣のクラスに戻っていく平尾から視線を外すと嶺歌は友人の神来南に腕を組まれ、心乃と詩茶に囲まれながら教室へと戻り始める。
するとその途中で詩茶にこんな事を尋ねられた。
「平尾と最近話すよね?」
嶺歌はその問いにどう言った意図が含まれているのかを察して言葉を返す。
「変な想像はしないでね、共通の友達がいてその子の事であたしに相談してきただけだから」
「共通の友達ってだれ〜?」
会話の間に心乃が口を挟む。うちの学校? と聞きながら興味津々な様子の心乃に嶺歌は学校は別なのだと説明をした。
魔法少女関係の事を話す訳にはいかないが、話せる範囲の事は友達である彼女らにも話したいという気持ちが少なからずある。
ここ数ヶ月でお嬢様の女の子と仲良くなったのだという話をすると嶺歌を囲んで話を聞く数人の友人達は楽しそうに話を聞いてくれた。
「そういえば私も見たことあるの思い出した! めっちゃ高級そうなリムジン来てたよね」
「え〜! マジ!? 見たかった〜」
「れかは交友関係広いもんね、めちゃ納得だわ〜!」
そんな会話をしているとあっという間に休み時間が終わり、いつの間にか試験勉強を中断して話に夢中になっていた事に気付いたのだった。
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