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「そうだわ。嶺歌さん、昨日は唐突だったと思うのですの。一晩経ってからまた聞きたい事は出来たかしら?」
暫くすると形南は再びこちらに目を向け、そんな言葉を出してくる。
形南は「何でも仰ってね」と明るい調子で笑顔を向けてくれていた。正直、聞きたい事はあったので彼女から話を振ってくれた事は有り難かった。
「あの……どうして魔法少女が適任だと思ったんでしょうか。執事さんに任せれば難なく運命の方と知り合えると思うんです」
魔法少女でなくとも知り合うきっかけの橋渡し役ならこの万能そうな執事で十分事足りる筈だろう。わざわざ手間をかけてまで魔法少女を探し出した理由は、あるのだろうか。
そう思いながら彼女に問いかけると形南はくすりと笑ってからこんな言葉を口にした。
「あらあら兜悟朗、褒められているわよ。私もお鼻が高いわ」
「恐縮で御座います」
「ああ、えと……そうなんですけど……」
形南は上品に口元に手を当て微笑み、兜悟朗は柔らかく笑って会釈をしてくる。
彼は運転中の為こちらに顔を向けはしなかったが、バックミラーから笑みを浮かべている事が分かった。
褒めたつもりではないのだが、彼女に問いかける為この様な言い方になってしまった。
だが口にした事は事実のため否定もできない。何だかこそばゆい思いが生まれてくる。きっと今この中で一番顔が赤いのは自分だろう。
そう思いながら頬を掻いていると「ご質問の答えですが」と形南の声が再び返ってきた。
「兜悟朗は確かに有能な執事ですわ。けれど、彼には出来ない事もありますの」
「面目ありません」
「出来ない事……?」
形南の言葉に申し訳なさそうに言葉を返す兜悟朗を横目に嶺歌は再び問い掛ける。万能な彼に出来ない事とは一体何だろうか。
すると形南は満面の笑みをこちらに向けるとこんな言葉を繰り出してきた。
「ええ、魔法少女のお力でしか出来ない事ですの!」
そしてそのまま彼女は心底嬉しそうな様子で言葉を続けた。
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