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放課後になると早速形南とカフェでデザートを食べ、女子会をしていた。
これはもはや恒例行事になりつつあるが、形南との会話はどんな内容でもいつも楽しく、嶺歌の時間の感覚を短くさせていた。
嶺歌は最近の兜悟朗の苗字を聞いた時の詳細を形南に話していた。
形南にセッティングしてもらった場であったため、その日のうちに彼女に報告をしてはいたのだが、具体的な話が聞きたいのだと形南は前のめりになってこちらに聞いてきていたのだ。
その気持ちがまた嬉しく、嶺歌は照れながらも兜悟朗との一件を形南に報告するのであった。
「まあ! 兜悟朗ってば、嶺歌に興味を持たれて喜んでいたのね!」
「あたしにとってはあの台詞は威力半端なくて、めっちゃ顔赤くなっちゃった」
「ふふふ、お気持ちとっても分かりますの!」
恋バナに花を咲かせながら嶺歌と形南は楽しいひと時を過ごす。
そうして今日はそろそろ切り上げてお互い試験勉強に勤しもうという話になり、一時間程で解散する事になった。
嶺歌はありがたい事に家の前まで送ってもらえる事になり、形南と共にリムジンに乗車する。
嶺歌は兜悟朗との顔合わせに胸を弾ませながら車の中で嬉しさに浸っていた。
「あれなは家で勉強するの?」
そしてリムジンに揺られながら嶺歌はふと思った事を尋ねてみる。彼女の事だから自宅以外の場所で勉強をする事もあるのかもしれない。
そう思っていると形南は笑みをこぼしながら「本日は八時からお稽古がありますので行きつけの場所でお勉強致しますの」と言葉を返してきた。
この後も稽古があるのだと何の不満もなさそうな顔でそう告げる形南を見て嶺歌は素直に感心していた。
(学校の後にまた稽古……凄いな)
純粋に彼女の疲れた様子を見せないその姿勢に敬意を示したくなる。
そんな事を思いながら嶺歌は凄いねと返事を返していると、途端に『ピコンッ』と言う聞き慣れたレインの通知音が、形南のスマホから鳴り出した。
「あら……?」
形南は不思議そうな顔をして「少しお待ちになってね」と嶺歌に告げてからスマホを確認する。
すると途端に形南は「きゃあっ!」と甲高い声を上げ始め、とてつもなく喜びに満ち溢れた表情をしてこちらを見つめてきた。
「どうしたのあれな」
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