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「嶺歌……緊急事態ですの! 平尾様が今から会えないかって……このような事、初めてですの!!」
形南は興奮した様子で顔を赤らめると直ぐに兜悟朗の方に向かって言葉を発し始める。
「兜悟朗! 今すぐに平尾様のご自宅に向かいますの! お稽古までまだお時間はありましてよ!!」
「畏まりましたお嬢様。早急にお向かい致します」
形南の興奮した様子に動じる事なくいつもの丁寧な返しをした兜悟朗は、柔らかな笑みを向けながら形南の命令通りに平尾の自宅へと向かい始める。
嶺歌は形南の即決力に驚きながらも、勉強よりも平尾との時間を迷う事なく優先させる彼女の一貫した姿勢に微笑ましい思いを抱いた。
(平尾君、もしかしてプレゼント渡すのかな)
先日の平尾とのやり取りを思い出し、そんな事を考えていると形南は申し訳なさそうな表情をしてこちらに目を向ける。
「嶺歌、申し訳ありませんの。私が平尾様の元へ参りましたら、直ぐに兜悟朗に貴女をご自宅までお送りさせますわ」
形南は嶺歌の勉強時間が削られてしまう事を謝っているのだろう。しかし嶺歌としてはそれは全く気にならないところであった。
「全然気にしないでよ。元々勉強は今日しなくてもいいようにって考えてたし、あれなの一大イベントがあたしも気になるからね」
そう言って形南にウインクして見せると彼女は嶺歌の名を呼びながらこちらの両手を握ってくる。
「ありがとう御座いますの! 本当に貴女は素敵なお友達ですわ! 感謝しても仕切れないですの!!」
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