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テスト返却が無事に終わり、放課後になると平尾が教室の外で嶺歌を待っていた。
お疲れと言いながら直ぐに下駄箱まで足を運び、校門の外で待っているであろう形南の元へ向かう。途中平尾にはプレゼントの件を尋ねていた。
「いや、別に特にこれといった事は……ただ、喜んでくれたあれちゃんがすごく、か、可愛かった」
「おっ、良いじゃん」
そんなやり取りをしているとあっという間に昇降口を抜けて校門の近くまで辿り着く。
途中ですれ違う友人らに声を掛けられまたねと言葉を返していると横にいた平尾はボソッと「凄いね」と声を漏らしてきた。
「? 何が?」
嶺歌は言葉の意味が分からず率直に尋ねると平尾は急にオドオドした様子で「い、いや……」と口をつぐむ。
しかし意を決したのか、そのまま言葉の補足を口に出した。
「和泉さんて、顔広いよね」
「まあ狭くはないけど」
純粋に思った事を述べると平尾は「そ、そう」と自身の頬を掻きながら不思議な事を口にする。
嶺歌自身も自分の友人は多く、恵まれている方だと思うが、それは性格ゆえな事も何となく理解していた。
コミュニケーションに関しては嶺歌の前に出るものはいない。そんな自分に誇りも持っている。
対して平尾はコミュニケーション能力が低い。それは初めて彼を認識した時から感じていたところだが、彼も彼でそれに思うところがあるのだろうか。
(あれなはそういう所も好きだと思うけど)
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