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直球でそのような言葉を口にする形南を前に平尾は顔を赤らめながら「う、うん」と言葉を返している。
彼の様子からして満更でもなさそうだ。何やらいい雰囲気のこの二人と行動を共にしてもお邪魔ではなかろうかと思うのだが、形南がそれを望んでいる事は普段お世辞を言わない彼女の性格からも理解できているため同行を拒否する選択は考えなかった。
「嶺歌さん、平尾様ご無沙汰しております。どうぞこちらへ」
すると会話が落ち着いた所を見計らったのであろう優秀な対応を見せた兜悟朗がこちらに向かって綺麗な一礼をしてきた。そうしてリムジンの中に入るように案内される。
校門付近でこのようなやり取りを行なっているため下校する数多の生徒達から様々な視線を浴びていたが、形南や兜悟朗は慣れているようで全く動じていない様子だ。
しかしこのような事に慣れていない嶺歌と平尾は周囲の目線が気になり早々にリムジンへ乗車をする。
平尾ほどではないが、嶺歌もこのような形で目立つのは慣れていなかった。
人前に立つ分には全く支障のない嶺歌も高貴な者との対面の場を多数の人から見られる事は何だか慣れない。目立つのは嫌いではないが、ベクトルが違うのだ。
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