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「貴女様にしていただきたい事は彼の目の前で多くの物を動かしていただきたいのです! そう、魔法の力で!」
「…………え?」
予想外の言葉に嶺歌は呆気に取られる。多くの物を動かす? 告白に物を動かす必要性を感じなかった嶺歌は頭に疑問符を浮かべながら興奮気味に話す彼女の言葉を耳に入れ続けた。
形南はそのまま口を開き続ける。
「私の考えたシナリオはこうですの。まず嶺歌さんが彼を人気のないところへ呼び出して下さいな。そこで私はお待ちしておりますの」
疑問点は未だに解消されていなかったが、どうやら彼女には明確な接触作戦があるようだ。
嶺歌は口を挟むことはせずそのまま形南の作戦が言い終わるまで待つ事にした。
「私と彼がご対面したところで嶺歌さんの出番ですわ。貴女様にはそこで周りのありとあらゆる物を宙に浮かせてマジックのように魅せてほしいのです!」
「……マジックのように?」
「ええ! 彼の周りを奇想天外な異空間にご招待して、それから自己紹介をしたいのですわ! そうすれば必ず印象に残る出逢いになりますの!」
形南は爛々とした瞳をこれでもかと言う程に輝かせ、一気に話し終えると言葉を話しすぎたせいか直後に息切れをしていた。はあはあと呼吸を整えながらも彼女は楽しそうである。
しかしこれで納得がいった。彼女の作戦も、何故彼女が魔法少女の力を求めているのかも理解した。それにしても面白い発想である。
「分かりました。じゃあ運命の方とはその様にして出逢いを果たし、それから親密になっていく作戦という事ですね」
そう確認すると形南は嬉しそうに「その通りですわ!」と大きく頷いた。しかしここでまた一つの疑問が生じた。
「あの、その運命の方……の事はどこで知ったんですか?」
一方的に彼を知っているというのはない事はないだろうが、有名な財閥のお嬢様であれば話は別だろう。
彼がというならともかく、彼女が一方的にというのは不思議な話だった。
すると形南は先ほどよりも柔らかく笑みをこぼしながら答えてくれた。
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