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(両片思いってもどかしいな)
そんな二人の様子を見ながら嶺歌は形南と試験の話をして時間を過ごした。
平尾も途中途中で会話に加わっていたが、いまだに顔の赤みが抜けないのか顔を背けることが多く、しかしそんな彼の様子を形南は終始微笑ましそうに見つめていた。
暫くするととあるデパートに到着し、形南は嶺歌を連れてそこで着替えをしたいのだと二人でデパートの中へと入り更衣室を借りる事になった。
デパートの更衣室を借りると言うのも何だか不思議な話であったが、形南の立場を考えると日常的な事なのかもしれない。
形南は更衣室に嶺歌も招き入れると制服の着方が間違っていないかを確認してきた。特に複雑な構造の制服でもないため着替えは直ぐに終了し、嶺歌が鏡の前で形南の髪型を少し整えてから一緒に更衣室を出る。
秋田湖高校の制服を着用した形南はとても新鮮で、普段膝より上を見せない彼女が短いスカートを履きこなしている姿はとても様になっていた。
「めっちゃ似合うじゃん! すごい新鮮」
嶺歌がそう素直に褒めると形南は嬉しそうに口元を緩めてありがとうですのと声を返す。
形南はどこからどう見ても秋田湖高等学校の生徒にしか見えない。嶺歌は貴重な形南のその姿を見て思わずスマホを取り出し一緒に写真を撮ろうと提案の声を上げた。
形南は嬉しそうに頷きツーショットを撮り終えると待たせている兜悟朗と平尾の元へ戻り始める。
今二人にはリムジンに残ってもらっている状況だ。
上機嫌の形南と共に黒いリムジンまで戻るといつものように迅速な動きで兜悟朗が降車し、嶺歌と形南を迎え入れる。
「おかえりなさいませ形南お嬢様、嶺歌さん」
「ええ、兜悟朗。お留守番ご苦労様ですの」
「ただいまです」
嶺歌は照れながらもそう答えると兜悟朗は柔らかな笑みを溢して直ぐに二人をリムジンの中へと誘導してくれた。
平尾がリムジンの中で待っており、彼が形南の姿を見た瞬間に一時停止するのを嶺歌は見逃さなかった。
「平尾様っ! お待たせしましたの。どうでしょうか? 平尾様と同じ御校の制服ですの」
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