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すると兜悟朗は満面の笑みを溢しながら正面を見据えてそう答える。
言葉だけではなく彼の表情からも形南の幸せを心から願っている事が伝わり、嶺歌はあたたかな気持ちを感じていた。
兜悟朗の形南に向ける親愛的な感情は、彼を好きになった今でも偽りなく嬉しいと思う自分がいる。形南を羨ましいと思ったり、俗に言うヤキモチという感情を抱く事はなかった。
それはきっと嶺歌が形南を本当に尊敬するべき友達として慕っており、そして兜悟朗の形南に対する敬愛自体を嶺歌が素敵なものであると心から感じているからなのだろう。
二人の主従関係は今後もずっと続いてほしいと、そう思ってしまう程に嶺歌はこの二人の関係が好きになっていた。
兜悟朗と微笑ましく思える会話をしていると彼は「そろそろ到着致します」と嶺歌に教えてくれる。
そこで嶺歌は今日の向かう先を形南から聞かされていなかった事を思い出し、これからどこに向かうのか兜悟朗にそのまま質問を投げ掛けてみた。
すると兜悟朗は柔らかな笑みを維持したまますぐに答えてくれた。
「商店街で御座います」
それを聞いて嶺歌は形南がしたいと考えている事を理解する。
きっと普通の女子高校生として『同じ学校の友人らと放課後そのまま遊びに来た』という体験をしてみたいのだろう。
実際同じ学校ではないが、形南は現に今秋田湖高校の制服を身に付けており、側から見ればどう見ても同じ学校の友人同士に見えるはずだ。
そう思い、形南と平尾の方へ目を向けてみると二人は未だにどことなくいい雰囲気を保ちながら静かに会話を交わしていた。
そんな二人の様子を喜ばしい思いで再び見ていると、嶺歌たち四人を乗せたリムジンがゆっくりと停車する。
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