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二人の様子を間近で見ていた嶺歌は彼女らの雰囲気が付き合う一歩手前のものであると感じ取った。本当に、あと少しでこの二人は進展するのかもしれない。
自分はここにいない方が更に二人の関係の発展につながるのではないかとそう考えていると「嶺歌!」という鈴が転がるような明るい声が嶺歌の名を呼んだ。
「嶺歌も一口お食べなさいな! とっても美味しいのですの!!」
形南は天真爛漫な笑みでこちらに駆け寄ると心底楽しそうにそのような言葉を発してくる。
「ありがと。じゃあ一口ちょーだい」
そうして形南に差し出されたコロッケをひと齧りいただく。
形南は高貴な令嬢である事からこのような食べ回しを好まないと思っていたのだが、そうでもないようだ。もしかしたらお嬢様だからこそ、憧れがあったのかもしれない。
嶺歌は形南にもらったコロッケをゆっくりと咀嚼しながら美味しいと声を出すと形南はそうでしょう!? と嬉しそうに笑顔を見せる。
嶺歌はそんな形南の笑みを見て、このまま抜けても良いものだろうかと悩み始めた。
(あれなは三人で回りたくて誘ってくれたんだしあたしが気を利かせて離脱しても逆効果かな? うーむ)
そんな思考を始めていると横では平尾が形南に半分に分けたコロッケを手渡していた。
彼が素手で鷲掴みしているのは自分の分のコロッケで、形南には素手で触っていなさそうな方を渡しているのを見ると、平尾の形南への配慮が感じられる。
(うん、やっぱりベタ惚れじゃん)
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