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第三十一話『嬉しい通知』
夏休みがやってきた。
長期休暇の予定を組むのは毎年の楽しみとなっている。
嶺歌は友人達との約束が決まった瞬間にスケジュール帳に書き込み、忘れないよう管理をしていた。
今日は夏休みが始まってまだ三日目だ。予定のない今日は、魔法少女活動と宿題に手を付けようと冷蔵庫のアイスを頬張りながら嶺歌は考える。
(兜悟朗さん、今日はどこで何してるんだろう)
兜悟朗とはあの日以来まだ会えていない。
自分には休暇は不要だとそう口にした彼はきっと今日も大切な主人である形南の護衛を兼ねてそばで仕えているのだろう。そう思うと形南が少し羨ましいと思う自分がいる。
(いや、あれなの専属執事なんだから当たり前じゃん! バカな考えはやめやめ)
これが嫉妬というものではない事を自分でもよく理解しているが、それでも兜悟朗と常にそばにいられる形南が羨ましいという感情は否定できなかった。
決して二人の関係を主従以上のものであると変な風に考えている訳でもないのだが、ただそばにいられるという事自体がとてつもない特典であるのだと、そう考えてしまう自分がいるのだ。
兜悟朗の笑みを思い出し、嶺歌は途端に恋しい思いを浮かべる。
(歳上と付き合いたい時ってどうするんだろ……)
兜悟朗とどうなりたいのか、嶺歌の気持ちははっきりしている。
最終的なゴールは兜悟朗とのお付き合いである。
嶺歌はそう改めて自身の思いを固めながら先日の形南とのやり取りを思い出した。
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