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思わず嬉しさで声が出る。周りに変な目で見られた視線を感じたがそれどころではなかった。
嶺歌は一気に胸が弾むのを体感しながらゆっくりとレインの画面を開いていく。
通知には『ご無沙汰しております』という内容が見え、その文字だけで言葉にし難いほどの喜びが自身の体を支配している事に気付いていた。
『夏休みいかがお過ごしでしょうか。形南お嬢様が近日中是非ご自宅に貴女様を招待されたいと仰られております。嶺歌さんはご都合の宜しいお日にちは御座いますでしょうか』
兜悟朗らしい綺麗で丁寧な連絡だった。嶺歌は瞬時に彼の顔が思い浮かび、そんな事にも嬉しさが増す。
形南とは夏休みに入ってからまだ一度も会っていない。
形南は夏休みも稽古が毎日のようにあるのだと以前彼女から聞いており、嶺歌も嶺歌で学校の友人らとの約束がありお互い忙しかったからだ。
きっと今回形南からでなく兜悟朗から連絡が送られてきたのは形南の計らいであろう。
彼女の気遣いに感謝しながらも嶺歌は兜悟朗から送られたメッセージを何度も何度も読み返していた。たったの数行の文であるのにとても大切な文面に感じられるのだから恋というものは本当に凄い。
「次の方ー」
するとラーメンの注文の番が回ってきた。
嶺歌は直ぐにでも返信したい気持ちを抑えながらスマホをポケットに戻して注文を始めるのであった。
第三十一話『嬉しい通知』終
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