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「いらっしゃいませ和泉様」
嶺歌が高円寺院家に訪れると数多のメイドや執事に出迎えをされた。少なくとも五十人くらいはいるのではないだろうか。
以前訪れた時はなかった事なので驚いていると形南がくすくすと笑いながらこちらに声を掛けてくる。
「嶺歌、とても驚いていらっしゃるのね」
「今日はどうしたの? この人数は流石にびっくりした」
嶺歌がすかさずそう答え質問すると形南は最近の高円寺院家の事情を説明し始めてくれた。
何でも夏休みに入ってから時間がいつもより取れるからと、形南の専属メイドをもう一人採用しようという話になり、一時的にメイドの人数を増やして試用期間を設けているらしい。
候補者たちが日替わりで形南のお世話をしていき、形南が総合的にどのメイドが専属に相応しいのかを審査するという話であった。
そのためこうして多くの形南の専属メイド候補者が高円寺院家に滞在しているのだと言う。試用期間は三週間らしく、あと一週間はこれほどの人数が高円寺院家に滞在するのだとか。
「メイドさんもきっちり考えて採用してるんだね」
形南の専属メイドは以前会ったエリンナ一人だけだと思っていたのだが、あくまで一番そばに仕えさせる人物が彼女なだけで、基本的には専属メイドは五人程控えているのだと言う。それはメイドに限らず執事も同じようだ。
つまり形南には計十人の専属従者が存在する事になる。
「基本的には兜悟朗一人をそばに仕えさせているけれど、女性でしか話せない事柄などは全てエリンナに相談していますのよ。残りの者達は時々私の指示でそばに控えさせるのですの」
形南の従者に関する話を今回初めて事細かく聞いた嶺歌は、そのような仕組みで高円寺院形南は守られてきているのだと理解した。
いつも兜悟朗がそばにいる印象が強いため、兜悟朗が完全に一人きりで行っているのだと思っていたが、エリンナや他の執事、そしてメイド達も陰から形南を支えているのだ。それはとてつもなく頼もしい話であった。
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