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そう聞いて嶺歌はもう一度子春に目線を向けた。
彼女はこちらを和やかな笑顔で見つめ返すと「左様で御座います」と形南の言葉を肯定する。兜悟朗の後輩という事は、彼と同じ学校を卒業したという事なのだろうか。
そう思っていると少し離れたところで静観していた兜悟朗が口を開き始めた。
「村国は私が第三学年の際に第一学年として入学してきた後輩なのです。当時私は高等部で、彼女は中等部で御座いました」
つまり兜悟朗と子春は五歳離れているということになる。
その話を聞いて嶺歌は学生時代の兜悟朗のことをもっとよく知りたくなってきた。だがそれは今このタイミングではないだろう。
そう考えながら関心があるようにも無関心にも見えないよう意識して言葉を返すと、兜悟朗は微笑みながらこちらを見返してきた。
目が合うだけで、嶺歌の心は天にも昇りそうな思いに駆られる。
「宇島先輩には大変お世話になりました。ですから今回このような形で形南お嬢様に先輩と共にお仕えできます事を心より嬉しく感じております」
すると子春はそのような丁重な言葉を発して再び綺麗な一礼を披露してきた。
本当に美しいその所作は、嶺歌も思わず自分もこのような美しいお辞儀ができたらと感じ始めてしまう程である。
「村国、こちらでは私をそのように呼称するのは控えますように。形南お嬢様に失礼のないよう気を付けるのですよ」
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