第三十二話『夏休みの想い人』

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 兜悟朗(とうごろう)は優しく諭すように子春にそう言葉を発すると、彼女はハッとした様子で申し訳御座いませんと形南(あれな)と兜悟朗に深い謝罪をする。  嶺歌(れか)としては全く違和感がなかったのだが、先輩と呼称したのがよくなかったのだろうか。財閥にも財閥のしきたりがあるのだろう。  そう思いながら三人の様子を静観していると気を取り直した形南が「それでは嶺歌、長くなりましたがこれからアフタヌーンティーでもいかが?」と嬉しい提案をしてくれる。 「いいの!? めっちゃやりたい!」  そう返すと形南は満面の笑みをこぼし、兜悟朗と子春に準備に取り掛かるよう指示を出す。  二人は嶺歌と形南に一礼をしながらそのまま長い廊下の奥へ颯爽と消えていった。  兜悟朗の離脱に少々寂しい思いを抱きながらも嶺歌は形南との時間に意識を戻す。こんな考えでは彼女に失礼だ。 「ありがとうあれな。会った時にとっておいた話したい事が色々あってさ、聞いてくれる?」 「勿論ですの! 人払いが必要でしたらいつでも仰ってね! 内緒話も大歓迎ですの! 嶺歌のお話、とっても楽しみだわ!!」  形南は親しげにそんな風に答えてくれる。嶺歌は本当に彼女が友達でよかったと改めて実感しながら、形南と二人でアフタヌーンティーの会場へと足を運んでいった。 第三十二話『夏休みの想い人』終               next→第三十三話
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