第三十三話『家庭』

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第三十三話『家庭』

 アフタヌーンティーの時間は終始お喋りで充実していた。いわゆる女子トークである。  恋バナをはじめとした最近の近況をお互いに思いつくがままに話していき、互いに相槌を打っては笑い合う。  とてつもなく楽しい時間となり、嶺歌(れか)形南(あれな)との会話をいつも以上に幸福に感じていた。形南とは本当に会話の波長が合うと話をする度にそう感じる。 「じゃあまだ平尾君とは夏休み会えてないんだね」 「そうなのですの。けれど、平尾様のその姿勢はとてもお好きですのよ。ですから(わたくし)も胸を躍らせて待つことが出来ますの」  形南は夏休みに入ってから、正確に言えば商店街の日以来、平尾に会えていないのだと話す。  何でも彼は夏休みの宿題を七月中に終わらせる信念を持っているようで、これには意外性を感じたのだが、本当に毎日宿題漬けで日々を過ごしているようだった。  彼から直接事情を聞いていた形南はその平尾の強い意志にひどく感銘を受け、そんな平尾に再び惚れ直したのだと嬉しそうに頬を染めていた。 「平尾様の一貫したご意志、本当に素敵ですの。宿題を終えられた際には一番にご連絡下さると仰ってくださったのですのよ」  形南はそう嬉しそうに頬を緩ませて嶺歌に話してくれる。  嶺歌も宿題にはそれなりに手を出しているが、毎日集中的に行えば三週間としない内に終わりそうな量ではあった。ということは、形南が平尾に会える日もそう遠くはないだろう。  それを形南に伝えると彼女は高揚した様子で楽しみですのと声を弾ませていた。分かりやすい形南のその様子は嶺歌から見てもとても可愛らしく、応援せずにはいられない気持ちを生み出させてくる。 「そうだ。あれな、メッセージの件ありがとうね」  そこで嶺歌は形南に今回の招待を、兜悟朗(とうごろう)伝手にしてくれた事に対してお礼を述べた。  人払いを予めしてもらっており、今この場には嶺歌と形南の二人しかいない。そのため兜悟朗の話も遠慮なくする事が出来ていた。  この部屋は防音性にも優れているのだと形南が張り切った様子で力説してくれていたため安心して彼への想いも口に出す事ができている。
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