第三十三話『家庭』

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「ふふ」  嶺歌(れか)の感謝の言葉に形南(あれな)は笑みを溢すと当然ですの! と自身の頬に手を当てながら言葉を発してきた。そうしてそのまま続きの台詞を口に出す。 「嶺歌のお気持ちは(わたくし)としても本当に嬉しいのですの! ですからチャンスがあるのなら、今後もさせていただきましてよ!」 「それはめっちゃ助かる。あたし、理由がないと兜悟朗(とうごろう)さんに会うの難しいからさ」  嶺歌がそう言うと形南はあらと声を発した。そうしてこちらを覗き込むような形で首を傾げてくる。 「兜悟朗と接触できる機会を探していらっしゃるのね……? 何か良い案はないかしら」  そう言葉を口にしてから形南は真剣な様子を見せ、上品な手つきで顎に手を当て思考を始めていた。  そんな彼女の態度を見て、有難いことではあるのだが、しかしそれは何か違う気がした。 「いや待ってあれな。あれなの専属執事さんをあたしの個人的な理由で振り回すのはなんか違う気がする。会いたいと思うのは確かだけど、これまで通りで良いんだよ。ただその気持ちをあれなに共有したかっただけでさ。あれなも平尾君との事でその気持ちは分かってくれると思って」  嶺歌がそう説明すると形南は一瞬驚いた目をしてこちらに視線を向けたが、直ぐに優しげな笑みに戻ると嶺歌に言葉を返してきた。 「嶺歌、貴女って本当に素敵なお方ね! ですがご遠慮は要らなくてよ。そのための専属執事なのですから」 「ん? どういうこと?」
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