第三十三話『家庭』

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「勝手に人の人生を格付けしないでもらえますか?」  そう言葉にして鋭い視線でメイドを見据えた。  嶺歌(れか)の迷いのない目つきに子春は一瞬動揺の色を見せる。構わず言葉を続けた。 「出て行った父も置いて行かれた母も複雑な感情はあれど今は家族幸せに暮らしてます。それをあなたの少しの調べくらいで決め付けられても困るし、あたしは家庭環境がどうのって言う人が一番嫌いです」  そこまで口に出すと嶺歌は席を立つ。  嶺歌のその行動に驚いたのか子春は身体を一歩、後退させた。 「あれなに釣り合わないって思うのはそりゃあありますよ。あたしだって何度も思いました。でもあれながそれを望んであたしを友達だと思ってくれていて、兜悟朗(とうごろう)さんもあたしを邪魔者扱いしません。二人は一度もあたしを遠ざけた事がなかったんですよ」 「あれなと兜悟朗さんが出て行けと言うなら出ていきますが、あなたに言われて出て行く気はないです。二人が戻るまで待ちますから。話はそれからです」  嶺歌は淡々と言葉に出し、子春をもう一度見据える。瞬きもせず彼女を見る嶺歌の視線は、子春の心に耐えきれないのか否か、直ぐに逸らされてしまった。  しかし子春は目を逸らしながら、尚もこちらに言葉を浴びせてきた。 「宇島(うじま)先輩も形南(あれな)お嬢様も貴女に騙されているだけです。二言はありません。出て行って下さい」 「何て失礼な」
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