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「お早う御座いますですの」
「……おはようございます」
マンションの前で嶺歌に朝の挨拶をする形南の姿。
通りがかるマンションの住人がチラチラとこちらに目を向け、それを気に留めない形南の背後には黒いリムジンと背格好の高い執事もいる。
そんな事に目を向けながら嶺歌は慣れないこの光景を振り払うように執事に促されリムジンへと乗車した。
彼は相変わらず手際が良く、こちらを誘導したかと思えばいつの間にか運転席へと戻り車を動かしていた。本当に俊敏な動きである。魔法少女である嶺歌も思わず感心してしまうほどだ。
そんな的外れなことを考えていると「早速ですが」と形南の方から言葉を切り出してきた。そうだ。今日は形南にとってとても大切な日となる。
嶺歌はすぐに表情を切り替え、彼女の方を見据えた。
形南と綿密な計画を立てた。実行するのは今日の放課後だ。
まず平尾の下駄箱に手紙を入れて放課後に裏庭へ来るよう誘導する。彼がきちんと来るように嶺歌が影から平尾を観察するという手筈だ。
そして裏庭へ彼が着いた途端に予め裏庭で待機していた形南と対面をする。
制服が違う彼女を見て平尾は困惑するだろう。
しかしそこですぐに嶺歌が魔法少女に変身し影から裏庭にある植木や掃除用具、その他にも裏庭にある物全てを宙に浮かせて見せる。
呆気に取られている平尾に形南が近付きこれは手品だと言う。
形南が手をパチンと鳴らしたところで嶺歌は魔法を解いて奇想天外な光景は通常のものへと戻る。そして形南が自己紹介するという流れだ。
「では放課後、あたしは平尾君を見張っています」
「ええ、お願いしますの。私も気合を入れましてよ」
「ご歓談中失礼致します。和泉様、到着致しました」
途中で兜悟朗に声を掛けられた。どうやら学校へ到着したようだ。
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