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つまり、形南が発注したこのトロフィーは平尾が陶芸で自作したお皿を3Dでコピーして、それを元にトロフィーとして加工して製作させた特注品であり、世界に一つしかない特別なものであるという事だ。
嶺歌は形南の異様で大胆な行動に再び驚きながらも、しかし彼女の性格をこの数ヶ月で理解し始めていたせいかすぐに彼女らしいと、そんな感想を抱くようになっていた。
「相変わらずドン引く事するよね……でもあれならしくてそういうとこ好きだわ」
嶺歌は思った事を正直に口に出す。
以前は飲み込んでいたドン引きエピソードも、今の嶺歌は包み隠さず形南に感想を話せていた。
以前よりもいい意味で、形南への遠慮が消えたという事もあるが、何より決して形南を馬鹿にしている訳ではないからだ。
また形南自身も嶺歌のこの言葉を聞いて不快な思いをする事はないだろうと、不思議な事にそう確信めいたものを持っていた。
「あらっ、嶺歌ってば正直なお方。ですがそのご意見には反論がありませんの」
形南はそう言うと面白おかしそうにくすくすと上品な笑みを溢す。
彼女の笑顔は取り繕っているようなものではなく、心の底から笑っているようなそんな微笑みであった。
嶺歌の予想した通り形南は気分を全く害する事なく、楽しそうに笑い飛ばして返答をしてくれていた。これは間違いなく、嶺歌と形南の信頼関係が以前よりも確実に強まっているからだ。
嶺歌もそう感じていたが、形南の方もそう思ってくれている。
そう実感できたことが嬉しく、嶺歌は形南の笑いに応えるように笑みを返すのであった。
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