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「嶺歌さんのお強さには幾度も学ばせて頂いております」
「大した事じゃないですよ……？」
嶺歌は彼の褒めちぎってくるその様子に照れながらそう答えを返す。
謙遜するなんて自分らしくない。いつもならありがとうございますと褒めてくれた事に対して礼を告げて終わりなのだが、兜悟朗の褒め方はあまりにも正直すぎて何だか素直になれないのだ。
しかしこのように嶺歌をしっかりと見て讃美の声を上げてくれるこの状況は喜ばしくもあった。いや、本当は嬉しくて仕方がない。これが本音だ。
「そのような事はありません。貴女様のご年齢でそのようにお強い方はそうお目に掛かることはできないでしょう」
兜悟朗の褒め言葉には、なんて大きな力があるのだろう。
まるで魔法にでもかかってしまっているかのように、嶺歌は一瞬で彼の言葉に酔いしれてしまう。
そう思いながら赤面している嶺歌は、暗闇で顔色が見えにくい事に安堵してから兜悟朗に言葉を返す。
「魔法少女なんで、その経験で今のあたしがいるんだと思います。ありがとうございます」
そうお礼の言葉も合わせて述べると兜悟朗はとんでも御座いませんとバックミラー越しに笑みを溢してきた。
静かな空間のリムジンに二人きりで会話したこの時間を、嶺歌は感慨深い思いを抱きながらも暫しその瞬間に浸るのであった。
第三十四話『強さ』終
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