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第三十五話『デートとして』
それからも夏休みはあっという間に時間が過ぎていき、八月を迎えていた。
嶺歌は早朝の魔法少女活動に出向きながらそこで形南がいつも乗車している黒いリムジンをとあるビルの屋上から目にする。
この近辺でリムジンを見掛けることは形南のリムジンしかない為、彼女が乗っている事は間違いなかった。
(あれ、こんな朝からどこに行くんだろ)
形南との家は決して遠い距離ではないが、形南が嶺歌に用でもない限りこの辺りに彼女が足を向ける事はなかった。
平尾の家も嶺歌とは真逆であるため嶺歌には心当たりがない。形南が連絡もなしにこちらの元へ訪れる事もなかったため疑問は更に深まる。
(今日はとりあえず切り上げるか)
数件の依頼を達成していた嶺歌は急ぎ足で自宅に戻るとすぐ人間の姿へと戻り始めた。
そして起きたての寝癖を付けた元の姿に戻ると、スマホを手に取り形南にレインを送ってみる事にした。
『あれなのいつも乗ってるリムジン見掛けたけど、今日は何かあるの?』
このような内容のメッセージを送るとすぐに形南から返事が返ってきた。
『嶺歌おはようございますの! 本日は偶然こちらでお稽古があるのですよ。まさか嶺歌が見られていたとは思いませんでしたの! 嬉しいですわ』
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