第三十五話『デートとして』

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嶺歌(れか)さん、お暑い中本日はお越し頂き誠に有難うございます。お暑いですがいかがお過ごしでしょうか」  兜悟朗(とうごろう)には数十分の間待ってもらい、急いで準備に取り掛かった嶺歌は自身を完璧な体制に整え着飾ると意気揚々と自宅を出る。  今日は白いワンピースにくすんだグリーン色のシアーシャツを羽織って、足元は歩きやすように真っ白なレースアップのスニーカーで挑んでいた。  カバンは持ち運びやすいよう肩掛けの小さなアイボリー色のショルダーバックを身に付けている。  髪の毛をまとめる時間はなかったため、寝癖が目立たないよう編み込みをしてからゴールドのヘアピンをこめかみに施していた。 「兜悟朗さん、こちらこそありがとうございます。暑いけど元気です。兜悟朗さんも変わりないようで」  兜悟朗は猛暑にも関わらずいつもと変わらないかっちりとした執事服を逞しく着こなしている。暑そうな様子が見えない彼は涼しげな表情で爽やかにすら見えてくる。  ドキンドキンと胸が弾むのを体感しながら嶺歌は兜悟朗にエスコートされるがままにリムジンの中へと乗り込んだ。 「本日はご希望の行き先などありますでしょうか」  嶺歌がリムジンに入ると兜悟朗も素早く運転席へと戻り、そんな問い掛けをしてくれる。  形南(あれな)に急な予定を言い渡された彼は、しかし柔軟に対応しており、そんな姿勢にも嶺歌の好感度は高まり続けていた。本当に、兜悟朗ほど完璧な人間を見た事がない。 「えっと、すみません。あたしも急な事だったのでちょっと思いつかなくて」
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