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兜悟朗に到着しましたと言われ、降車した場所は美術館だった。嶺歌は兜悟朗らしい選出に気持ちが高揚する。
兜悟朗と二人で静かな空間を歩き回るというのは、まさに大人のデートといった印象を生み出してくれていた。
(うわあ……これから二人で入るのかあ……)
そんな事を考えながら、考えただけでも顔が赤くなる嶺歌は今稽古をしているであろう形南に感謝をしていた。形南には今度改めてお礼をしよう。
そう自分の中で決意しながら兜悟朗の方に目を向けると彼はこちらの視線に気付き、すぐに柔らかな笑みを返して「それではいきましょうか」と優しい声を出してくれた。
「はい。美術館久しぶりです」
「それは何よりです。僕も芸術を嗜むのは久方振りでございます。同じですね」
(うわっ同じですねって……微笑みがやば……)
兜悟朗の一つ一つの動作に動揺してしまう嶺歌は、彼に悟られぬように無難な言葉を返して美術館の中へと入っていく。
今回訪れた美術館は少し遠出したところにある場所で入場料は一切かからない有名な所だった。
兜悟朗はもしかしたら気を遣ってこの場を選んでくれたのかもしれない。
自分がお金を出すと言っても嶺歌は断りたい性格である為、その点を考慮してくれているようなそんな気がしていた。
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