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いよいよ放課後だ。
今日は用事があるからと予め友人たちに伝えていた嶺歌は終礼が終わると同時に教室を抜け出した。隣のクラス――二組にいる平尾を尾行するためである。
しかしこの状況では友人らに声を掛けられるリスクが高いかもしれないと懸念していると、今まさに三人の友人に声を掛けられていた。
「れか〜恋バナ聞いて欲しいんだけどぉ」
「ねえねえこの後タピらない?」
「れかちん〜〜クラス離れちゃったから会えなくて寂しいよ〜」
嶺歌に用事があることは他クラスの友人までには伝えきれていない。嶺歌は悩んだ。
そのまま友人達に適度な言葉を返しながら嶺歌は思考する。そして運がいいことに良案を思いついた。
「週末は空いてるし良かったら四人で遊びいこ! 悪いんけど、あたし今日は用あるからまたね!」
「えー! 行く行く!! 空けとくし!」
「用あったのに呼び止めちゃってごめんね、そしたら週末の事でレインしとくね!」
「おけおけ! また明日ぁ〜」
友人たちは優しく嶺歌を見送ると三人で楽しそうにそのまま談笑を続けていた。嶺歌は三人から目を離すとトイレに駆け込み、急いで魔法少女に変身する。
個室に光が放たれるがあまり人気のない職員室側のトイレなので怪しまれる可能性はごく僅かだ。そして嶺歌は魔法少女の姿で自身の姿を透明にした。
(これなら平尾君を見張っても彼にもバレないし友達にも見つからない。一石二鳥だ)
我ながら良案だと思いながら平尾のいる教室へ向かう。透明なので人間とぶつかる心配もない。
実態がない状態になっているため、誰かとぶつかっても嶺歌の身体が通過されるだけなのだ。あまり使う事はない魔法だが、このような時には便利な魔法である。
しかし二組へ到着し、教室を覗き込むと平尾の姿が見当たらない事に気がついた。
途端に嶺歌は血の気がサァーっと引いていくのを感じる。これはまずい。彼がどこへ行ったのかを考える前に身体が動き出す。
下駄箱まで猛ダッシュで向かっていくと案の定、そこに彼の姿が見つかった。
嶺歌はホッと胸を撫で下ろしそのまま観察を続ける。どうやらちょうど今、下駄箱の手紙に気付いたようだった。
彼の下駄箱に入れた手紙は嶺歌が入れたものだが、それを書いたのは形南本人だ。
彼女がどのような手紙をしたためたのかは分からないが、平尾はその手紙をゆっくりと読むとそわそわした様子で辺りを見回した。どうやら予想外の手紙に驚いているようだ。
そしてそのまま彼は靴を履き替えずに校舎の奥へ行くとその足で裏庭へと向かっていった。これで作戦は第二段階へと入る。
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