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第三十六話『夏祭りに』
『ねえ嶺歌! 明日夏祭り行こうよ!』
八月に入って一週間程経った頃、友人の古味梨に夏祭りの誘いを受けた。しかし嶺歌は先約があったためこう言葉を返す。
「こみ、悪いんだけど明日は妹と夏祭りの約束してるんだ」
嶺歌は嶺璃の顔を思い浮かべながら古味梨に謝罪した。
誘ってくれた事は素直に嬉しく、すぐに「でもありがとね」と言葉を付け加える。
すると古味梨はこのような提案を申し出てきた。
『じゃあさ嶺璃ちゃんも一緒でいいじゃん! うちらは大歓迎だよーっ!』
「あー、そか! 嶺璃に聞いてみる」
その考えにまで及ばなかった嶺歌は、彼女の提案を一旦保留させてもらうと一度電話を切った。
「嶺璃、明日の夏祭りの事なんだけどさ」
嶺歌はリビングに向かい、ソファでテレビを見ている嶺璃に声を掛ける。
すると嶺璃はいつものように明るい様子でこちらに目を向け「うんれかちゃん何っ!?」と尋ねてきた。
嶺歌は先程の内容を嶺璃に話してから「もちろん断ってもいいんだよ」と最後に言葉を付け足した。元々二人で屋台を見て回る約束であったため、嶺璃の気持ちを優先したかったのだ。
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