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(兜悟朗さんに褒められたかったな)
嶺歌は古町の褒め言葉を無意識に兜悟朗に置き換え、しかしそれが現実ではない事に小さくため息をつく。
だがそこで脳内はまた別の事に意識が向き始めた。そういえば形南も祭りに来る予定はあるのだろうか。
「れかちゃん、ヨーヨー釣したい! ねえいい? だめ?」
すると嶺歌の浴衣の裾を引っ張って嶺璃がそうお願いをしてきた。
嶺歌はすぐに笑顔を作りながらいいよと声を出すと未だ会話を続けている古味梨達に目を向けて声を上げる。
「こみ達、悪いけど嶺璃とヨーヨー釣り行ってくるからちょい抜けるわ。後で合流しよ」
「まじ? 俺もヨーヨー釣りしたいから一緒いい?」
すると予想外に古町の方からそう言葉を掛けられた。
特段断る理由もないため嶺璃の許可を取るとそのまま三人でヨーヨー釣りのある屋台へ歩き出す。古味梨たちはまた後でねーと明るい調子で快く送り出してくれていた。
「和泉の妹いくつ?」
「小六で今年十二だよ!」
「おー結構とし離れてんのな」
古町は嶺歌と古町に挟まれるちんまりとした嶺璃に話しかけると、嶺璃も素直な様子で彼の質問に答える。そうして嶺璃は古町にとんでもない言葉を放ち始めた。
「れかちゃんの彼氏候補になる?」
「ええっ!?」
古町は驚いたのかその一言で嶺璃を凝視する。
「おーい嶺璃、そういうの止めなって」
途端に嶺歌は嶺璃の頭をコツンと優しく叩く。嶺璃は「ごめんなさいお姉ちゃん」と言いながら嶺歌を見上げていた。
嶺璃は会う男皆にこのような発言をするのだから困ったものである。恋人持ちの男だったらどうするのだ。
嶺歌は呆れながらも嶺璃の素直に反省する姿勢を目にして今度は優しく彼女の頭を撫でてやる。
「もうそういうの聞くのなしね。できる?」
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