第三十七話『返り討ち』

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 そのまま自宅に戻った嶺歌(れか)は宿題に手をつけようと思っていた計画を急遽変更した。  自室に入り、魔法少女の姿に変身するとそのまま窓から飛び出して、まだいるであろう子春の姿を探す。念のため自分の姿が透明になる魔法をかけておいた。 (いたいた)  子春はノロノロとした足取りで嶺歌の住むマンションを出ているところだった。  表情は暗く、以前高円寺院(こうえんじのいん)家に一時(いっとき)でも勤めていたメイドにはとても見えない。彼女の所作や佇まいは本当に綺麗であっただけに、今回のような事態になったことは少し複雑だ。 (でもそれを許せるほどあたしも悪には優しくないし)  嶺歌は自身の中で決意を固めると子春の尾行を開始した。  彼女が今どこで暮らし何をして生活を養っているのか、そして彼女の本音は何なのかなど必要な情報を徹底的に調べ上げていく。  今回は子春が二度と嶺歌に害を与えないよう弱点を探し出し、無力化することが目的だ。  きっとまだ子春は嶺歌への執念を諦めていない。また何か仕掛けてくるだろう。  それが何かは分からないが、彼女の精神状態を考えると思い立ってすぐに行動に出てくる可能性も否めない。  用心をするに越した事はないと、嶺歌はその日一日をかけて子春の尾行と観察を続けるのであった。
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