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そう言って嶺歌は持っていなかったはずの子春の自白していた音声データを瞬時に彼女の目の前に取り出し、それを再生する。
『貴女のようなお子様のお話を警察が信じるとでも? 私のアリバイは完璧ですよ? 盗聴器だって録音だって貴女が今していないのは分かった上で行動してるんですからね』
それは先ほど子春が自分で暴露していた音声だ。それを聞いた子春は真っ青な顔をしてこちらを見る。
「そっそんなものどこで…………!!?」
嶺歌はその言葉を無視して子春を一見するとその音声データをひらひらと手先で揺らして言葉を告げる。
「訴えられたくないなら、今後二度とこのような迷惑行為をしないって誓って下さい。脅しじゃなくて命令です。拒否するなら問答無用で警察に行きますんで」
無力化できれば嶺歌はそれでいい。
彼女が今後も悪事を働くのであれば話は変わるが、この様子を見るにきっとそれはないだろう。
警察沙汰になれば彼女のこれまで培ってきたものが全て台無しになる。それを分からない程彼女が愚かな人間とは思えなかった。
「わ、分かりました。二度と……しません」
「信用ならないんで念書と誓約書を書いてもらえますか? 書類はちゃんと準備してありますから」
そう言って嶺歌が取り出した二枚の紙を見て子春は再びバケモノでも見るかのような顔でこちらを見上げる。
「あ、貴女……本当に一体…………」
あまりの準備の良さに驚愕している様子だった。
今日このような事態になるとは思っていなかったであろう嶺歌が、何故その書類を持っているのか疑問なのだろう。しかし嶺歌が答えてやる義理はない。
早く書くよう催促をすると、子春は震える手つきで文字を書き、それを嶺歌は確かに受け取った。
「じゃ、もうほんとに来ないでくださいね。次あなたが何かしたら、その時はあなたのこれまでの努力も水の泡です」
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