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嶺歌はそう言って子春が帰るよう玄関の扉を開ける。
計算通りの時間で終われた事に内心安堵しながら子春に目を向けると、彼女は絶望的な表情をしながらのらりくらりと足を進めていた。
「素敵な所作ができる人だなって思ってたんですよ、本当に」
「……?」
嶺歌はすっかり顔色を悪くした子春に向けて最後に言葉を放った。
「あなたの佇まいも、所作も何から何まであたしは尊敬に値する方だとそう思って見てました。これを機に改心して下さい。あなたが愚行を止めるならあたしはあなたのこれからを応援してますから」
そう言って子春が玄関の外に出たのを確認して、彼女の言葉は待たずに玄関の扉を閉めた。
敵に情けをかけるのはどうなのかと、そう思う者もいるだろう。だが嶺歌は魔法少女だ。彼女が反省して今後を改めるのなら、正義を愛する者としてそれを肯定する。悪が正義に変わるのなら、それほどに嬉しい事はない。
(改心、してくれるといいな)
そう思いながら約一時間使用していた全ての魔法を解除する。嶺歌はずっと魔法少女の姿を人間に見えるようにと魔法をかけ続けていた。
竜脳寺の時のように消耗して倒れないようにと、時間を気にしていたのだが今回は上手く管理が出来ていた。それに安心する。
魔法少女の力がなければ子春をあのように無力化する事はできなかっただろう。改めて自分が魔法少女で良かったと心の底からそう思う。
(今回は誰にも迷惑かけずに済んだ……良かったっと)
そう思い、心身共に疲れを覚えた嶺歌はそのままソファの上で眠りにつくのであった。
第三十七話『返り討ち』終
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