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彼はまるでこちらを責めるようにそう告げるが、嶺歌を責めたい思いから兜悟朗がこのような言葉を口にしている訳ではない事も理解していた。
兜悟朗はただ無力であった自分を嘆き、悲しんでいるのだ。
それは嶺歌を兜悟朗が心から案じてくれているという事を意味していた。それに気付き、嶺歌は彼に視線を合わせる。
兜悟朗の視線は、やり切れない思いを込み上げたような嘆きを訴えかけており、そんな彼の姿と共に放たれる言葉に思わず嶺歌は目を見開いた。
「貴女はもっと……ご自分を大切にして下さい」
嶺歌は日頃、自分を疎かにしているつもりはない。ただ今回においては形南と兜悟朗には言わない方がいいだろうと自己判断していたのも事実だ。
それに魔法少女の力がある嶺歌にとって彼女の無力化はそう難しいものでもなかった。
だから兜悟朗がそのような思いをする必要は全くない。彼には以前も助けてもらっている上にその気持ち自体が嬉しいのだ。
嶺歌は自分の身は自分で守れるとそう理解している。ゆえに今回二人に黙っていた事も間違った判断とは思えなかった。
「兜悟朗さん、あたしは大丈夫ですよ。魔法少女ですから。ちょっとやそっとの事じゃあたしに敵う人間なんていないんです」
嶺歌はそう言って自身の胸にコツンと自分の拳を置いてみせる。
だからそのような顔をしないでくれと、そう願いながら彼に明るい調子で告げてみた。
「兜悟朗さんも言ってくれましたよね? あたしは強いって。その通りですし自分の限界値は以前の件であたしも学習しました。もうあんな事にならないように調整もしてます。だから本当に心配はいらないんですよ」
兜悟朗の安心できそうな言葉を考えて次々と放ってみるが彼の表情はいまだに変化が見られない。こんな彼を見るのは本当に初めてだ。
嶺歌は困惑しながらどう彼に納得してもらおうかと悩み始めていると、兜悟朗は無言で嶺歌の両肩を掴んできた。
突然の出来事に嶺歌は目を見開き、顔の熱を一気に感じ始める。
(えっ…………!!?)
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