28人が本棚に入れています
本棚に追加
「……今後は」
「どうか僕にもご相談下さい。貴女様がお強い事は存じております。ですが貴女が魔法少女で何でも出来てしまうお方だと知っていても……心配でならないのです、胸が張り裂けそうな思いなのです」
(うそ…………)
嶺歌は兜悟朗の放つ言葉全てに驚きを隠せず、そして同時に顔の熱はどんどん上がっていく。
真っ赤に染まり上がっているであろう嶺歌の顔は、しかし兜悟朗の真剣なその視線から目を逸らす事を妨げていた。
「嶺歌さん」
そうして兜悟朗は再びこちらの名を呼ぶ。
「貴女をお守り出来るのならこの兜悟朗、どこへでも駆けつけ致します。どのような場所にいようともです」
「ですがもう二度と、お一人でご判断なさらないで下さい。強い弱いは関係ないのです、僕が怖いのです」
兜悟朗の口調は砕けたり畏まったりと彼らしくもない言葉が混ざり込んで放たれていく。それは兜悟朗がいかに今、冷静でいられなくなっているのかを示していた。
嶺歌はそんな兜悟朗の発言に脈が急速に速まるのを感じながら彼の次の一言で、声を出す事ができなくなっていた。
「貴女様を失うのが……怖いのです」
ドクンと心臓が一気に跳ね上がる。嶺歌の両肩に置かれた熱い彼の体温は、肩以外にも伝わっているのかと思う程に身体中の全てが熱く、そのまま彼の瞳を見返した。
すると兜悟朗は最後にもう一度言葉を漏らした。
「約束して下さいますか……?」
「…………はい」
もうそれしか、言葉が出なかった。
第三十八話『それしか言えず』終
next→第三十九話
最初のコメントを投稿しよう!