第三十九話『相談と恋バナ』

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 形南(あれな)とはレインでのやり取りこそしているものの八月に入ってから一度もまだ会えてはいない。  そろそろ会って互いの近況を報告したいところであるのだが、形南の予定は空いているのだろうか。  そんな事を考えながらも今日の予定が何もなかった嶺歌(れか)は、昨日の一件で上手く頭が働かず自室のベッドでぼんやりと部屋を見ていた。  するとレインの通知音が突如鳴り出す。  嶺歌がスマホに目を向けると、それはとても珍しい相手からの連絡だった。 「平尾君だ、何の用だろ」  平尾とはダブルデートをした時にグループレインを作成していたためそこから知り合いになっていた。とは言っても嶺歌はまだ彼を友達に追加していなかった。  彼からきたレインを見てそのまま友達追加をすると、早速平尾のメッセージに目を向けてみる。 『和泉(いずみ)さんに相談したい事があって、今日電話で話せる時間ないかな?』 「相談……あれなの事しかないよね?」  平尾のメッセージに独り言を口に出す。  嶺歌はそう呟いてから『今でもいいけど』と返事を送ると、平尾からすぐに電話がかかってきた。  その迅速さに思うところがありながらも嶺歌が応答してみると、開口一番に『い、和泉さん……どうしよう』といつになく弱気な声の彼が電話口の向こう側にいた。 「何? あれなとなんかあったの?」 『い、いやさ……実は明日あれちゃんと久しぶりに会うんだ……夏休み入ってからは二回目なんだけど』 「おっまじ? それで?」  嶺歌は二人の関係が順調に進んでいる事に安心して続きの言葉を催促する。  すると平尾は焦った様子で悩んでいる内容を話し出した。 『ふ、服が決まらなくて……』 「は?」
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