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拍子抜けして途端に声を上げる。平尾は『ほんとに決まらないんだ』と困ったような声を出して嶺歌に訴えかけている。
どんな相談かと思えば全く大したことのない悩みで嶺歌は呆れかけていた。しかしそこで、自分が兜悟朗と出掛ける時の事を想像すると何だかそうとも言い切れない気がしてきていた。
(好きな人とって考えるとこいつの言ってる事分かるかも……)
平尾はきっと大好きな形南との外出だからこそこうして頭を悩ませているのだろう。そう思うと何だか協力したくなると言うものだ。
嶺歌はテレビ通話にしようと提案すると、平尾は戸惑った声を発しながらも数秒後にテレビ通話に切り替えてくる。彼は冴えないTシャツを着て、自室であろう部屋に多くの衣類を広げている際中であった。
「ちなみに明日どこ行くの?」
早速嶺歌が彼にそう尋ねると平尾は頬を掻きながら『え、映画館』と口にする。
「候補の服は?」
立て続けにそう質問をすると彼は忙しなく『こっこれとこれがいいかなって悩んでるんだけどさ』と言ってテレビ画面に映るように候補のトップスとズボンを見せてきた。
「まじ? そんなダサい服着てくつもり?」
嶺歌はど直球にそう告げると、平尾は心底ショックを受けた様子で『そ、そんなに?』と愕然とした様子を見せる。嶺歌は過去の平尾の服装を思い出すが、ここまで酷いセンスをしていただろうか。
平尾が手にするティシャツはどこで購入したのか、漢字がデカデカと印字された謎のデザインをしておりまるで文化祭にでも行くかのようだ。これをデート服に着ていくのは流石にない。それにズボンもよく見ると穴が空いている。
この比較的荒い画面上で見えてしまうのだから実物はもっと酷いに違いない。
嶺歌はあまりの酷さにため息を吐きながら声を出した。
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