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「平尾君今までの服は自分で決めてたんだよね?」
確認の為そう問いかけると彼は小さく頷く。なら何を間違ってこんなヘンテコなコーディネイトを選出したのだろうか。
嶺歌は平尾にこれまで通りの選び方でいいとアドバイスをするが、平尾はバツが悪そうにこんな言葉を口に出してきた。
『そ、それが……自分が今までどんな風に選んでたか分からなくなったんだ』
「へ? どゆこと?」
嶺歌は訳が分からず彼に言葉の意味を問う。だが平尾も困惑した様子で『で、デタラメ言ってるわけじゃなくて』と必死に弁解していた。
嘘をついているとは思っていないが、彼の言っている事が真面目に分からない嶺歌は、しばし平尾の話を聞いてみることにした。
「疑ってないから落ち着きなよ。最近なんかあったの? 話くらい聞いてあげるけど」
嶺歌が平尾に落ち着くようにそう言葉を投げかけると、彼も少し焦りをしまえたようでこちらに短くありがととお礼を言い、ここ最近の出来事を嶺歌に話し始めていた。
平尾はここ数日、形南と会っていない間に彼女に対しての想いが溢れ出しているらしい。
それは本人も予想している以上に大きなもので、今すぐにでも彼女に想いを伝えたいものの、しかしどうやったら形南にそういう目で見てもらえるのかを考え始めると反芻思考に陥り、埒が開かないようだ。
そのような状況にはまってしまっているせいか、服装選びにも頭が回っていないようだった。混乱状態になりかけた平尾は悩んだ末に嶺歌に相談をしようと重たい腰をあげて相談した、という流れらしい。
それを聞いた嶺歌は何となく彼の気持ちが分かってきていた。結局は、恋煩いのようなものだろう。平尾はそのせいでいつもは出来ていた当たり前のことが出来なくなってしまっているのだ。
つまり、平尾は形南を思うがあまりに彼女に思い焦がれる行為以外の事が出来ない状況なのだ。
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