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兜悟朗の名前を聞いた瞬間に嶺歌の心は驚くほど騒ぎ出す。彼の事を考えるだけで顔が熱くなってくるのだ。
そして同時に平尾が車での移動を容認した事を珍しいと思っていると、彼は聞いてもいないのに説明をしてきた。嶺歌が何を思っているのか察したのかもしれない。
『あ、あれちゃんにいつも合わせてもらってるから、俺も、彼女に合わせたいって思って』
「まああれなとしてはそっちの方が断然いいよね。だってお嬢だもん」
『そ、そうだよね……俺の配慮が足りなかった…き、嫌われてないかな!?』
平尾は急に不安そうな声を出してそんな事を言ってくる。
嶺歌は、両片思いであるのに本当に互いが完全に片思いであると思い込んでいるこの状況に不思議な気分になった。
案外分からないものなのだろうか。嫌われているなら遊ぶことなどしないだろうと嶺歌が当然の事を言ってやると、平尾は心の底から安堵した様子で良かったと声を漏らす。
しかし正論であっても平尾のような今の状況では不安に駆られるのも仕方がない話なのかもしれない。そんな事を思っていると嶺歌はふと、自身の兜悟朗への想いを平尾にも話したくなってきた。
「あのさ、あたしも最近好きな人ができたんだ」
『えっそっ、そうなのっ!?!?!?』
「うん、兜悟朗さん」
「エッッッ!!!??? あれちゃんのしっ執事さんっっ!?!?」
あまりの驚きぶりを見せた平尾は相当驚いたのか声が上擦っていた。嶺歌は予想していたその反応にそうだよとあっさり答えると平尾に最近の話をしてみる事にした。誰かに彼への想いを共有したかったのだ。
そうして、魔法少女に関する事以外のある程度のエピソードを平尾に話し終える。
時間はとうに夕方になっていたが、しかし話しだした嶺歌は兜悟朗への思いが止まらず平尾に言葉を繰り出し続けていた。
平尾は嶺歌の次々と放たれる兜悟朗との出来事に終始『えっ』『すごい…』『ええっ!?』などと言葉にならない声を上げ続けて聞いてくれており、一段落すると『い、色々ありすぎだね』とそんな感想を述べてくる。
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