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嶺歌は理解ができず思ったことをそのまま口にする。
しかしそこで初めて気がついた。常に人目を気にする平尾のようなタイプの人間はそれが結構なダメージになるようだという事に。
すると平尾は言葉をつっかえさせながらも本音を嶺歌に伝えてくる。
『か、かなり気にするよ。俺、友達もそんないないし目立つのす、好きじゃないんだ』
「分かった、オッケー。じゃあ平尾で」
嶺歌は新たな認識を頭に取り入れ、彼の言葉に肯定の声を上げる。
その嶺歌の返答に平尾はホッとしたのかありがとうと声を返してきた。本気で安心したようだ。しかしそこで嶺歌は念の為言っておこうと、ある事をついでに補足しておく事にした。
「あたしがあんただけそう呼んでたのはあれなの知り合いだったからなんだよね、他意はないから」
『し、知ってるよ……和泉さんは俺に興味ないでしょ』
「うん全然。てかお互い興味ないじゃん? あ、でも今日の電話は楽しかった。好きな人の話っていいもんだね」
以前は平尾が自分を間違って好きになってしまうのではないかと危惧していた嶺歌も、それは絶対に有り得ないと今なら確信を持って断言出来る。それほどまでに平尾の形南への思いが強いのを理解しているからだ。
嶺歌は躊躇いなく本音を伝え、しかし楽しかった事実も口にする。平尾とはまたこうして好きな人の話をするのもいいのかもしれない。そう思えていたからだ。
『ぜ、全部和泉さんの言う通りだよ。あ、あれちゃんとの事で何かあったらまた相談していい?』
平尾も嶺歌と全く同じ気持ちのようだ。嶺歌は利害が一致することを認識しながらいいよと声を返して電話を終える。
そして兜悟朗の話を平尾にしていた事で無性に兜悟朗に会いたくなってきていた。
しかし、それが不可能であることも理解していた嶺歌は台所まで足を運ぶと無心に夕飯を作り始めるのであった。
第三十九話『相談と恋バナ』終
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