第四十話『思い出してときめく』

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 形南(あれな)は当然だとでも言うかのように声の調子を明るくしてそう答える。  嶺歌(れか)は彼女の頼もしさに嬉しい気持ちになりながらも形南にまだ時間がある事を確認してから、最近起こった近況話を二人でする事になった。  形南は早速昨日の平尾とのデートを嬉しそうに嶺歌に報告してくれる。  どうやら平尾とのデートは順調に上手くいき、進展こそないものの互いに楽しんで時間を過ごせたと実感ができていたようだ。  念の為聞いてみたが、平尾の服装も無難でとてもカッコよかったのだと嬉しそうに話してくれていた。彼は嶺歌の助言通りの服装を身に着けていったようで、それを聞いた嶺歌は心の中で良かったと安心した。  ある程度の一日の出来事を話し終えた形南は、次に申し訳なさそうな声色でこのような事を口に出す。 『本当は前日にお話ししようと思ったのですけれど、(わたくし)の中でいつも以上にデートへの緊張が強かったのですの、ですから何だか落ち着かなくて連絡できなかったのですのよ。ごめんなさいね』  嶺歌はその言葉を聞いて一昨日の平尾の事を思い出していた。二人共同じような心境で前日を過ごしていたという事だ。  何だかお似合いな二人が更にお似合いに見えてくる。微笑ましいその状況に、嶺歌は笑みが出ていた。 「全然いいよ、今日聞けて良かったよ」  そう本心から思った言葉を返すと、形南はありがとうございますのと心底嬉しそうな声を口にしてから『ねえ嶺歌っ!』と声の調子を一段階あげてこちらに言葉を放ってくる。  すると形南は興奮した様子で、このような言葉を続けてきた。
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