第四十話『思い出してときめく』

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兜悟朗(とうごろう)が休暇を取った日の事を、ずっとお聞きしたいと思ってましたの!!!!!』  形南(あれな)はこれ以上我慢ができないといった様子でそう尋ねてくる。彼女の声からどれほど高揚しているのかが分かってしまうほどだ。  形南には子春との一件を話していない。  しかし、兜悟朗が珍しくも休暇を取ったという話を主人である形南が知らない訳がない為、彼がその日嶺歌(れか)に会いに来ていたという話自体は、形南の認知しているところだった。  嶺歌は兜悟朗が子春との事があったせいでわざわざ取る筈のなかった休暇を取り、会いに来てくれていたという事実を改めて認識する。そして同時にあの時言われた台詞を鮮明に思い出していた。 ――――――『貴女様を失うのが……怖いのです』  あれだけはっきり休暇は必要ないと口にしていた兜悟朗が、嶺歌にあの事を伝えるためだけに休みを取得し、あのような本音を曝け出してくれた事が、本当に嬉しく感じられる。  嶺歌は思わず言葉を止めてあの日の出来事に思い浸っていると形南の名を呼ぶ声でハッと我に返る。 『嶺歌どうなさったの? どうかしまして?』  心配そうな声で形南に声をかけられ嶺歌は慌てて言葉を発した。 「ごめん! 何もないよ! てか、その二人で会った日のこと思い出してたら余韻に浸っちゃって……」 『あら!!! 何ですの!? 何がありましたのっ!!』  形南はその嶺歌の一言で更に火がついたようで、先程よりも押しが強い様子でこちらに話を促してくる。  嶺歌は白状するように、子春の事は伏せながらも兜悟朗とあった出来事を形南に報告するのであった。
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