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「嶺歌さん、感謝致しますの。本当に有難う御座います」
「お安い誤用ですよ! 見守らせていただきましたけど、いい感じでしたね」
「まあ! そう思いますの!? ねえ兜悟朗! 貴方も同じ感想なのかしら!?」
「ええお嬢様。私めにもそう感じられました。ご立派な自己紹介で御座いましたよ」
「ふふ! まあまあ! 二人して私を褒めるだなんて、今日は素敵な日ですのね!」
平尾が立ち去った後で形南と合流し、現在はリムジンの中で会話をしていた。
形南が自宅まで送らせてくれと嶺歌をリムジンに乗せたのだ。嶺歌もお言葉に甘える事にしていた。
形南はあれ以降ずっと気分を高まらせながら嬉しそうに顔を緩ませている。そんな彼女の姿を見るのは何だか可愛らしく、楽しかった。
(いい仕事したな)
そう思い、窓から見える景色を眺める。形南の依頼はこれで終了だ。
彼女と平尾は今後時間をかけてゆっくりと互いの距離を近くしていけるだろう。形南の姿を見て自然とそう思えていた。
だが嶺歌は、これで彼女との関係を終わりにするのは何だか寂しかった。そのまま形南の方に顔を戻し「あの」と言葉を口にする。
「どうしましたの? 嶺歌さん」
形南は頬を仄かに染まらせながらこちらを見返す。嶺歌は意を決して彼女に言葉を放った。
「依頼は終わったと思うんですけど、お茶を飲みに行ったり、ショッピングに出掛けたり……そういう友達とするような事を形南様としたいと思って。というかあたし、形南様のことはもう友達だと思ってるんですけど」
自分の発言に我ながら顔が赤くなる。小っ恥ずかしい事を口に出した嶺歌は柄にもなく顔を赤らめながら形南に向けていた視線を逸らした。
すると形南は口元に手を当てながら「まあ!」と言葉を発する。
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