第四十二話『自覚するのは』

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「平尾様の呼び名を変えられたのですね」  すると唐突に兜悟朗(とうごろう)はそんな言葉を口にする。  嶺歌(れか)は突拍子もない言葉に驚いて思わず「えっ?」と声を出していた。まさか平尾の呼称表現について彼から言及されるとは思っていなかったのだ。  兜悟朗の方を見ると、彼は口元を緩めながら「平尾様との仲も良好なようで安心いたしました」と言葉に出してくる。 「実は夏休みの間に電話したんです。平尾があれなとのデート服を悩んでたので相談に乗ってて、その時に呼び捨てにして欲しいって言われたんです」 「あっでも、それはあたしが普段男子を君付けで呼ばないからそれが嫌なだけみたいで……別に変な意味はないんですお互いに」  嶺歌は自分が何か言い訳がましい事を口にしているのではないかと自覚しながらも、兜悟朗に変な誤解を与えたくないがために必死になって説明を続けていた。万が一にでも兜悟朗にだけは、平尾を嶺歌が好いていると思われたくなかったのだ。 「嶺歌さん、焦らなくとも大丈夫ですよ。僕は誤解をしている訳ではございません」
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