第四十三話『救助』

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 暫くの後、息が正常に整い始め足の痛みも引いてきた嶺歌(れか)は医務室のベッドに寝そべったまま、泣き出す形南(あれな)とそんな形南を支える平尾に看病されていた。兜悟朗(とうごろう)も先程からずっと嶺歌のそばについてくれている。 「嶺歌……本当に良かったですの。ごめんなさい、(わたくし)が……きちんと一緒についていくべきでした」 「あれちゃん、和泉さんは無事だったんだ。だ、だから泣かないで。もう少ししたら良くなるってお医者さんもい、言ってたし」  そう言って形南の肩を優しく支える平尾を目にして嶺歌は口元が緩んでいた。形南を支える平尾のその男らしい姿を見て安心したからだ。  そして嶺歌は二人を見据えて「あたしは大丈夫だから、ちょっと海岸沿いでも散歩してきなよ」と声を掛ける。  このまま看病してくれるのはありがたく嬉しいのだが、形南の心情を考えると散歩してきた方がいいだろうと思っての提案だった。そして平尾ならばきちんと形南の心の支え役として全うしてくれそうだと、そう思ったのだ。  形南はでもと言いかけたものの平尾はこちらの意図を察してくれたのか「い、行こうあれちゃん。和泉さんゆっくり休んで」と言ってほぼ強制的に形南を連れていく。  形南はチラチラと嶺歌を振り返ってくるので嶺歌は彼女に今できる精一杯の笑みを向けて小さく手を振った。  バタンと扉が閉められると医務室には嶺歌と兜悟朗の二人だけになる。嶺歌は兜悟朗に目を遣り、小さく声をかけた。 「兜悟朗さん、ありがとうございます。本当に、もうだめかと思いました」  そう言って嶺歌を儚げな目で見つめてくる兜悟朗にお礼を言う。改めてお礼を告げるのは少し照れるが、きちんと言葉に出来たことに安堵した。
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